今回は航空自衛隊「ブルーインパルス」のエンジン不足問題について、本拠地、松島基地の格納庫に潜入し、その現状をレポートします。
動画でも解説していますので宜しければご視聴ください。
ブルーインパルスのエンジン不足問題について松島基地に潜入し実情をレポート【ゆっくり解説】
Contents
松島基地とは
まず最初に、松島基地の概要について軽く触れます。松島基地はアクロバット飛行チーム「ブルーインパルス」の本拠地であり、F-2の訓練なども行っている航空自衛隊の基地です。ここで行われる「航空祭」は全国からファンが訪れる激混み必死の超絶イベントです。
「ブルーインパルス」はもちろん、米軍の「F-16」ファイティングファルコンなども友情出演することが多いです。米軍はとにかく無茶するので見ものです。
ちなみに、これらイベントの様子や情報を詳しく知りたい方は、ブログとYouTubeで詳しく解説していますので、最下部のリンクからご参照ください。
エンジン不足問題とは
それでは本題に入っていきましょう。そもそもエンジン不足問題とはなにか。
2019年4月2日、ブルーインパルスの機体としても使われている三沢基地所属の中等練習機T-4が、訓練中に片方のエンジンが破損し、緊急着陸するトラブルがありました。
エンジン製造元であるIHIの調査の結果、振動によりタービンブレードが損傷し、エンジンが破壊されたという事です。
経年劣化により振動が大きくなり、既存の部品では振動を抑えることが出来なくなったことが原因と考えられています。
それによりブルーインパルスを含めたT-4練習機、約200機が飛行停止に追い込まれ、エンジンの振動を抑える部品「バッフル」の改修を順次受けることとなりました。
しかしながら、部品の交換には双発エンジンを取り外しての作業が必要になることから交換作業が長引いており、T-4による訓練、練度維持や、ブルーインパルスの飛行に影響が出始めています。訓練機の整備を優先させるために、当面はブルーインパルス6機体制から4機体制となることが発表されました。
これが一連のエンジン問題です。
基地潜入レポート
それでは基地内をレポートして行きます。
見学開始時間まで基地の正門で待っていると、広報担当の自衛官がお迎えにきてくれました。このご時世ですから、検温やアルコール消毒を経て構内に入場です。
国防の要である自衛隊基地でクラスターなんて発生させたら一大事ですので、
皆さんも見学などのイベントに行くときにはご留意ください。
ここから隊員さんの先導で、ブルーインパルスが駐機する場所まで移動します。ただ歩っているだけでも基地の雰囲気、なんかいいですよね。どうやら普段は入れない展望棟の上からブルーを見れるらしく、まずはその場所に向かいます。
しかも、今の時間はブルーの離陸を見ることが出来るとのこと。ラッキーすぎる。
しばらく歩き、展望棟の階段を上って屋上に向かいます。屋上にはこのような観覧席が設けられています。
航空祭の時にここで見れる人はVIPに限られるのでしょうね・・・
眼下には2機のブルーが駐機されており、これから離陸準備に入るところのようです。
が、ここで非情な通達。天候不良により、訓練中止。嫌な予感はしていましたが、上空は厚い雲に覆われており、離陸しても着陸困難な可能性が高いため、止む無く中止。残念ですが仕方ないですね。
基地外の奥の方に目をやると、震災の津波を機に作られた防潮堤の上で、離陸待ちのカメラ小僧達が。訓練中止をまだ知らない哀れな子羊たち。
さて、それでは気を取り直して格納庫へ向かいます。ここは格納庫の入り口なのですが、津波による浸水を機に、何と格納庫を持ち上げてかさ上げしたとの事でした。
下のコンクリートの部分がそれにあたります。これだけの構造物を持ち上げて設置しなおすなんて、お城の石垣修復などで使われる移築技術と一緒でしょうか。
格納庫内のエレベータで2階に上がると、目の前には2代目と現行のブルーが駐機されていました。
と、その前に、広報担当の方がボードを使ってブルーの説明をして下さいました。通常の練習機T-4にはない、ブルーインパルスの専用装備など、「そうだったのか」と、ためになる内容で興味深々でした。
説明のあと、10分程度のフリータイム。思う存分ブルーを嘗め回します。まずは2代目ブルーのT-2。戦後初の国産戦闘機「F-1」の兄弟機だけあって、現行のブルーに比べると機体は大型です。
ブルーインパルスにミサイルが装備されている光景、
なかなかレアですよね。
後ろから見るT-2は、どこかF-4ファントムに似ていてかっこいい。
それでは今日の本題、現行型のブルーインパルスについて嘗め回していきましょう。格納庫内には計6機の現行型ブルーが駐機されており、さきほど離陸準備をしていた2機と合わせると8機存在することになります。恐らくこれで全機でしょうか。
格納庫内にある6機のT-4は、その全てがエンジンを取り外された状態となっており、現状で稼働できるのは、離陸準備していた2機のみと思われます。
そして、写真では少し見にくいですが、隊員さんが整備中の機体は1機だけ。
エンジン改修が追い付かない原因は、整備に時間がかかるから、と、いうことでしたが、すでにエンジンは全機外してある状態。なのに整備中なのは1機だけ。整備に時間がかかるのも事実なのだと思いますが、もしかすると交換部品自体の納入が追い付いていないのかも知れませんね。
仮に部品を交換しても既定の推力が得られずに、調整作業に時間がかかっているとも聞きます。と、いう事で、ブルーインパルスのエンジン不足問題は、予想以上に深刻なのではないかと感じた格納庫潜入でした。
T-4練習機の老朽化問題
T-4は1988年の配備からすでに30年以上が経過していますので、そりゃあ、いたる所にガタはきているでしょう。これは以前から言われていたことです。
ジェット機の基本訓練にはまだまだ使えると思いますが、年々戦闘機もデジタル化されており、コックピットの計器類も、液晶ディスプレイを採用したグラスコックピットになっています。
F-35や次世代F-3の導入などを考えると、練習機の更新が必要な時期になって来ているのではないでしょうか。米空軍では最新型のボーイングの練習機を採用し、日本にも売り込みをかけているとの話です。
その他 基地内の風景をご紹介
それでは最後に基地内の風景をいつかご紹介したいと思います。
こちらは東日本大震災で被災(流された)2番機の尾翼です。震災当時、他の機体は九州の式典に参加するため基地を離れており、被災したのはこの2番機のみでした。不幸中の幸いではありますが、震災を忘れないため尾翼がモニュメントとして設置されています。
次は基地内移動中に遭遇した「軽機動装甲車」展示用に置かれている物なので、雨風にさらされて色あせてますね。
日本庭園のような場所にミニ富士山。
基地見学の締めくくりは、皆さんご存知「厚生センター」でお買い物。
こちらの厚生センターにはデイリーヤマザキが入っており、隊員のみならず、一般人も買い物をすることができます。ブルーインパルスグッズなど沢山売っていますので、航空祭などで訪れた際には是非お立ち寄りください。
また、この日は土用の丑の日が近かったため、「うな重」ののぼりが立っていました。いやー、お値段が気になります。うな重に後ろ髪を引かれながらも、記念のお買い物も終わり、これで見学は終了です。
ゲートまで歩っている途中に、ふと視線を横に向けると、
やけに和風な建物が目に入ってきました。どうやらこれは基地内にある居酒屋とのことでした。
隊員さんは隊舎の自分の部屋ですら飲酒をすることはできず、決められた時間にこの居酒屋でのみ飲むことができるらしいです。まさに修行僧のような生活。本当に頭が下がります。
本ブログでは様々な自衛隊イベントについて紹介していますので、ご興味のあるかたは、カテゴリの「自衛隊イベント」からご覧ください。
また、動画でもイベントを紹介していますので、ブログよりもビジュアルで見たい方は是非ご視聴下さい。